共同親権「恐ろしい」 DV被害者から不安相次ぐ「家裁が適切に判断できるのか」 県弁護士会も声明「事実見逃し命じる恐れ」
離婚後も父母双方が親権を持つ共同親権を導入する民法改正案が17日、参院本会議で可決、成立する見通しとなった。虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の恐れがあれば単独親権となるが、判断は家庭裁判所に委ねられる。鹿児島県内のDV被害者たちからは「家裁が適切に判断できるのか」「元配偶者に親権を求められたら恐ろしい」などと不安の声が相次いだ。 県内の女性(53)は、激高して暴力や暴言を繰り返す夫と12年前に離婚した。当時小学生だった娘2人の親権は女性が持つことになったが「(女性が)養育できないと判断したら、(元夫が)一方的に子どもの面倒を見る」と書かれた協議書に押印を求められた。 改正案の施行後は、既に離婚した父母も共同親権への変更申し立てが可能となる。女性の娘たちは成人しているが「自分は早く離婚したいばかりに、協議書に同意してしまった。もし離婚時に共同親権を求められていたら、と想像するだけで恐ろしい」と明かす。「共同親権を、よく知らない人は多い。加害者からの要求を断れない人も出てくるのでは」と懸念する。
県内に暮らす50代女性は、元夫からモラルハラスメントや性的DVを受けた。性交を強要され続け、体力や経済的不安から妊娠中絶した当日には、事前に相談したにも関わらず「ぶん殴りたい」と暴言を吐かれた。幼い長男も暴力を振るわれるようになったが、怖くて助けられなかったことを今でも悔いている。 20年ほど前、小学生の息子2人の手を引いて家を出た。息子2人はすぐに連れ戻され、夫とは別居。2人とは年3回ほどしか会えなくなった。ようやく離婚が成立したのは昨年だった。 離婚後に子どもと会えない親が、面会交流を求める気持ちは分かる。ただ、親権を家裁が判断することには不安が大きいという。「証拠がない虐待やモラハラを家裁が見逃すことはないか。逃げた被害者にとっては手続きの負担も大きい」といぶかしがる。 共同親権となれば、進学や病気の治療方針などは父母双方で決めるが、意見が対立した場合は家裁が判断することになる。DVによる離婚問題を扱う県内の女性弁護士は「DVの加害者が子どもの福祉を度外視して執拗(しつよう)な関与を繰り返す事案は多い。共同親権とされると、子どもが両親の対立に巻き込まれるケースが増えることにつながりかねない」と指摘した。
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